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無機転換対応

2012年 改正労働契約法成立
                             (厚労省HP)

 

労務の2018年問題

同一の使用者との間で締結された複数の有期雇用契約の契約期間を通算し5年を超える有期契約労働者に無期雇用契約への転換権(無期雇用転換権)が付与される。
2013年4月1日に労契法18条が施行されてから満5年となる2018年4月から無期転換権の行使が本格化すると見込まれている。

実例1 2017年12月15日<東京大学、有期教職員の5年雇止規定撤廃>
有期契約の教職員を最長5年で雇い止めにする規則(5年上限規定)を定めている東京大学が、この規則を撤廃する方針を固めた。有期で5年を超えて働くと無期契約への転換を求められる労働契約法の「5年ルール」の適用を阻む規則だとして、労働組合が撤廃を強く求めていた。
東大で有期で働く8千人近くに無期転換の道が開かれることになる。

実例2 2018年02月02日 <東北大雇い止め・労働審判>
 東北大が3000人規模の非正規職員を3月末から順次雇い止めにする問題で、雇用継続が見込めない見通しの非正規職員ら40~60代の男女6人が1日、同大に地位確認を求める労働審判を仙台地裁に申し立てた(国公立大の雇い止めを巡る労働審判の申し立ては全国初)。
 6人は単年度更新の有期契約で、いずれも改正労働契約法に基づいて無期転換を申請できる通算勤務期間5年を既に超えている。
 同大が2014年度に就業規則を変更し、非正規の雇用期間を最長5年としたのは「無期転換を阻止するための脱法行為」と批判。

実例3 2018年2月2日(金)<JETRO 雇止文書を撤回>
 日本貿易振興機構(JETRO、経済産業省所管)が、有期雇用労働者の無期転換を回避するために、「雇止」を行う旨の内部文書が発せられていたことが発覚。
 世耕経済産業相は「文書を撤回し、労働契約法の趣旨を周知徹底し直すように指示した」と国会答弁。

無期転換制度の内容

<社員区分>
正社員-フルタイム正社員
   ∟短時間正社員
   ∟限定正社員
非正規 ①有期(無期転換、高年齢者再雇用)
      ②パートタイム
      ③その他(派遣、業務請負等)

 

1 無期転換制度の背景

非正規社員の雇用者数全体に占める割合
 平成15年 3割超
 平成27年 約4割
パートタイム労働者数
 平成26年 1651万人(全体の3割)
 うち女性が7割
有期労働契約労働者数
全国で約1400万人
そのうち約3割が通算5年を超えて有期雇用契約を反復

厚労省 「平成23年パートタイム労働者総合実態調査」
(1)「働いている理由」
「主たる稼ぎ手ではないが何らかの家計の足しに」:56.0%
「生きがい・社会参加のため」:31.3%
「自分の学費や娯楽費を稼ぐため」:27.7%
「家計の主たる稼ぎ手として、生活を維持するため」:26.2%
(3)処遇
「現在の会社や仕事に対する不満・不安がある」 54%
「賃金が安い」49%
「パートとしては仕事がきつい」26%
「有給休暇が取りにくい」26%
「雇用が不安定」20%
「正社員になれない」13%
∟法定の権利行使が抑制される問題点

法改正等
2012年8月 労働契約法改正(18条~20条。民主党政権時)
2012年8月10日 通達(基発0810第2号「労働契約法の施行について」)
なお、
2013年 特別立法)研究開発力強化法改正(自民党政権時)
      大学・研究機関の教員・研究者等についての特例
2014年 特別立法)有期雇用特別措置法
      高度専門職・継続雇用高齢者
2018年4月 施行後5年が経過・・・無期転換権行使が本格化

 

2 無期転換制度(労働契約法18条)

<要件>
①同一の使用者との間で締結された2以上の有期労働契約の契約期間を通算した期間(「通算契約期間」*平成25年4月1日以降締結の契約)が5年を超える労働者が、
②使用者に対し、現に締結している有期労働契約の契約期間が満了する日までの間に、当該満了する日の翌日から労務が提供される期間の定めのない労働契約の締結の申込みをしたとき、
<効果>
使用者は当該申込みを承諾したものとみなされ、契約期間満了日の翌日から労務が提供される無期労働契約が成立する(とみなされる)

Q1 「通算契約期間」が「ちょうど5年」の場合はどうか
 ×要件満たさない(「超え」ていない)→(5年+1日)
Q2 労契法に基づく無期転換権は、平成30年4月1日以前には発生しない?(最短でいつから行使できるか?)
×2つの契約の通算契約期間が5年を超えること。
∟ex 1日+5年で要件充足→理論上は、平成25年4月1日の施行後2日目で行使権利発生。
平成30年4月1日は「本格化」の節目である。

 

無期転換権の効果

(1)「別段の定め」がある部分を除き同一の労働条件(契約期間を除く)」(労契法18条)
無期転換≠正社員化
賃金、所定労働日数、所定労働時間数等が自動的に変更されるわけではない。
(2)別段の定め
別段の定め=労働協約、就業規則、個別労働契約

無期転換権の行使・効果

Q 実際、どう行使されるのか
~雇止めに対抗した無期転換権行使(慰謝料請求付き)
∟無期転換権を行使した時から契約終了後に無期雇用契約が成立するため、単なる雇い止めではなく無期雇用契約の解約、つまり「解雇」をしたと同じように扱われることになる(通達第5の4 (2)キ)。雇い止めに対抗して無期転換権を行使した場合、雇止めが無効であれば、正社員の解雇と同水準の解雇事由が必要となる。
=無期転換権行使によって雇用継続は強力に守られる(法改正の趣旨)

対応区分

具体的な対応策1 (非転換方向) ~雇止法理~

No1 雇止め

雇止め=雇用契約期間の満了により労働契約が終了すること(その意思表示)
民法の原則によれば、意思表示をするまでもなく、当然に契約終了し、解雇権濫用法理を適用する余地はない。
しかし、雇止法理による限定がある
・東芝柳町工場事件(最判昭49.7.22)
2か月の有期労働契約後5~23回にわたって更新された臨時工について、実質上無期労働契約と異ならないとして、解雇権濫用法理を類推し、雇止めを無効とした。
・日立メディコ事件(最判昭61.12.4) 無期労働契約と同視できない場合でも、雇用継続に対する労働者の合理的期待がある場合は、解雇権濫用法理を類推(雇止めは有効)。
最判を含む判例の蓄積を踏まえ、2012年 雇止め法理明文化(労契法19条。施行は2013年4月1日)
<要件>
①過去に反復更新された有期労働契約で、その雇止めが無期労働契約の解雇と社会通念上同視できると認められるもの(実質無期型)or労働者において、有期労働契約の契約期間の満了時にその有期労働契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があると認められるもの(合理的期待型)
②労働者からの申し込み(期間満了前or期間満了後に遅滞なく)
③使用者が当該申込みを拒絶することが、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないときは、
<効果>
使用者は、従前の有期労働契約の内容である労働条件と同一の労働条件で当該申込みを承諾したものとみなす。

Q6 上記の①(実質無期型)、②(合理的期待型)に該当するか否かはどのように判断するか?
∟上記の①②に該当するか否かは、当該雇用の臨時性・常用性、更新の回数、雇用の通算期間、契約期間管理の状況、雇用継続の期待を持たせる使用者の言動の有無などを総合考慮して個別事案ごとに判断される(厚労省HP参照)
cf 平成12年9月 厚労省「有期労働契約の反復更新に関する調査研究会報告(平成12年報告)・・・裁判例の類型化(4タイプ)
純粋有期、実質無期契約タイプ、期待保護(反復更新)タイプ、期待保護(継続特約)タイプ

近時の裁判例(一例)
・本田技研工業事件(東京高裁平成24年9.20)
更新期待の放棄を認定
・カフェベローチェ事件(東京地判平成27.7.31)
学生アルバイトとの有期雇用契約(直近4年11か月。のべ19回。その前にも、空白期間を挟んで3年7か月、14回の更新あり)
「勤務頻度が付き5回程度、月間20時間~30時間程度であること等を踏まえ、「雇用継続の期待は単なる主観的な期待にとどまり、同期待には合理的な理由があるとはいえず、労契法19条2号にも該当しない」
・ジャパンレンタカー事件(名古屋高判平成29.5.18)
22年間反復更新してきたアルバイトに対する雇止めが無効

無期転換と雇止め~労働契約法19条 (Cf 厚労省HP)
「例えば、・無期転換ルールの適用を避ける目的で、無期転換申込権が発生する有期労働契約の満了前に、一方的に、使用者が更新年限や更新回数の上限などを就業規則上設け、当該ルールに基づき、無期転換申込権が発生する前に雇止めをする場合
・無期転換ルールの適用を避ける目的で、6ヶ月後、再度有期労働契約を締結するとの前提で、一旦雇止めをする場合等については、雇止めをすることが、客観的に合理的な理由を欠くものとされる可能性もあると考えられます。」
∟単に『無期転換権を付与したくないので更新をしない』という理由で雇い止めをした場合は、無効になる可能性が高い。
無期転換権を付与したくないと直接は言わないまでも、そのほかの取って付けたような理由で雇い止めをする場合は使用者の意図は容易に見抜かれ、無効になる可能性が高い。

まとめ

多数の判例から、雇止めを確実に行うためには、使用者として次の点に注意すべき。
1 有期雇用の理由
なぜ期間の定めのある雇用契約を行うのか、明確に認識すること。
たとえば、雇用調整、正社員とは異なる労働者の活用。それをふまえ、「合理的期待」を生じさせることがありうるかを検証する。
2 無期雇用との明確に区別すること
採用手続、担当業務、雇用管理等で区別し、かつ、その違いを労働者にも認識してもらう。多くの裁判例では、正社員と異ならない待遇を期待させる言動をし、雇止めがしにくくなっている。
3 契約更新手続きを厳格に行うこと。
自動更新は不可。契約書の作成等の期日管理を行う。事後手続不可。
∟これらによって、有期雇用の契約内容が尊重され、雇止めに至っても解雇法理の類推適用がされにくく、されたとしても、その判断内容は正社員のそれと異なることとなる。

 

No2 不更新合意・更新上限規則

<個別契約>
「不更新合意」とは、期間雇用契約の更新を行わない旨の合意や、更新回数に上限を設ける旨の個別合意を指す。
「次回更新をしない」旨の記載がある雇用契約書の締結を求める。

Q7 雇止めの判断にあたっての効果は?
参考判例1
近畿コカ・コーラボトリング事件(大阪地判平17.1.13)では、不更新条項を有効とし、「雇用契約を終了させる合意が成立した」とされた
参考判例2
明石書店事件(東京地決平22.7.30)
「有期契約は3年まで」とする会社の方針に基づいて不更新条項を付された契約書に署名押印したところ、会社が不更新条項を根拠に行った雇止めの効力が争われた。
∟「・・・不更新条項のある労働契約を締結するという一事により、解雇権濫用法理の類推適用が排除されるというのでは、・・・判例法理の趣旨が没却される。・・・不更新条項を付したことが、権利濫用の適用に当たって、評価障害事実として総合考慮の一内容として考慮の対象となるものと解する・・・」 結論:雇止めの正当性を否定。
雇用契約書に署名してもらえれば形式的には成立する。
ただし、不更新合意の有効性については、単に書面上の合意があれば足りるのだけではなく、合意の有効性が厳しく問われている。
明石書店事件では、「総合考慮の一要素にすぎない」とした(民法上の意思表示の瑕疵(心裡留保、錯誤、詐欺、強迫等)のアプローチによるべきとの説もある)。
∟不更新合意は不更新合意を従業員が断れば直近の更新で雇い止めになり、不更新合意に同意すれば次回の契約で雇い止めになるため「前門の虎、後門の狼」条項といわれ不公平な手法であるとも批判される。
交渉では有利に活用しうるとしても、厳しく問われる

類型別

①初回の契約締結時から不更新合意がある場合
初回から「通算5年を超えて雇用契約を更新しない」などと不更新合意を締結している場合は一見何ら問題なく雇用契約を終了させて更新しないことができそうにも思える。このような場合は原則として法的リスクは低い。
しかし、実際は実務上、ルールが形骸化しているような場合も多く、「標的を絞った雇止め」のような場合、形式的には合意があるが、実質的には例外いとして、書面の効力が減殺される可能性がある。
② 2回目以降の契約更新時から不更新合意がある場合
2回目以降の雇用契約更新において不更新合意を結んだ裁判例においては、裁判所は契約更新の上限を設けたことについて従業員の契約更新に対する合理的期待を失わせる事情としては判断しなかった(シャノアール事件・東京地裁・平成27年7月31日判決)。
③無期転換間際になって不更新合意を締結した場合
「無期転換権を付与するのはうちの会社では認められないので退職して欲しい」といった理由で、通算雇用期聞が5年を超えるのを防ぐために不更新合意にサインを求めることも実務上あり得る。
しかし、このような場合は仮に不更新合意の書面にサインをしたとしても、厳しく不更新合意の有効性が問われることになる。

不更新合意は、特に雇止めの交渉上、優位に働くことは確かであるが、万能ではない(一要素に過ぎないと思っておく)。
より雇止めの効力を確実にし、理解を求めるにあたっては、以下のような補充がありうる。
①不更新合意の説明(書面。雇用調整等) *従業員説明会
②熟慮期間(その場でサインを求めすぎず、持ち帰り検討も。長短あるが)
③不更新の予告期間の確保(当初からか、無期転換権取得の直前か。期間満了までの残期間はどの程度か。再就職などへも配慮)
④対価性(不更新合意そのものは労働者にとってはデメリットが大きい。退職金や慰労金の支給も一要素となる。合意を無効とした場合、返還義務があるのかという疑念も生じ、心理的効果もありうる)

就業規則における上限規制

「有期雇用契約の更新は4回まで」、「契約更新は通算して5年まで」というように、更新限度回数や更新限度年数を就業規則や個別の労働契約書に記載し、規制すること自体は可能。
これらの定めによって、「雇用継続への合理的期待(労働契約法19条②)を失わせ(低下させ)、雇止めを有効にする方向の効果が期待できる。

Q 就業規則で規定しているのだから、まず有効なのではないですか?
 △ 実態として、上限を超えた更新をしている会社、社長、上司、人事担当者等が期待を抱かせるような言動をしているような場合は、形骸化。

Q 上限・不更新の認識(期待低下)を立証するためには
・認識の機会をちりばめ、真に理解をしてもらう
 就業規則、個別契約書(当初・更新)、説明+実際の運用(例外を生じさせない)
・+合意や承諾が真意であること
 東芝ライテック事件(横浜地裁平成25年4.25)では、労働契約を終了させる合意があったと認めるためにはその旨の労働者の意思が明確でなければならない」とされた
上限規定は、有効な手段ではあるが、形骸化がなくても、最終的には、「合理的期待」という規範的な要件によって判断されるため、絶対ではない。

No3 無期転換権の放棄

 

(1)無期転換権の事前放棄

事前に『無期転換権が発生した場合でも無期転換権を行使しない」旨の合意をすることができるかという問題。
∟通達第5の4 (2)オ
「無期転換申込権が発生する有期労働契約の締結以前に、無期転換申込権を行使しないことを更新の条件とする等、有期契約労働者にあらかじめ無期転換申込権を放棄させることを認めることは、雇止めによって雇用を失うことを恐れる労働者に対して、使用者が無期転換申込権の放棄
を強要する状況を招きかねず、法第18条の趣旨を没却するものであり、こうした有期契約労働者の意思表示は、公序良俗に反し、無効と解されるものであること。」
∟ただし、有力学説上、「合理的な理由があってそれが本人の真意に出ていると認められれば放棄できる(菅野「労働法」)

 

(2)無期転換権の事後放棄

無期転換権発生後に会社と合意をして無期転換権を行使しない旨の合意ができるかという問題がある。
上記通達は言及なし。
学説:有効説あり(無期転換権という権利が発生した後は従業員側の立場もそれなりに強くなるのだから、一概に権利発生後の不行使合意を無効にする必要はないのではないか)

クーリング期間
有期労働契約に、一定期間の空白があり、その前後の有期労働契約のない期間(空白期間)が「6か月以上」(←原則期間)であるときは、無期転換ルールとの関係では、通算する契約期間はリセットされる(労働契約法18条2項) 。

空白期間よりも前の有期雇用の期間は、無期転換ルールが適用されるかどうかを決める「5年間」の中には通算されない。
この場合には、「6か月以上」のいわゆるクーリング期間を経過した後の、次の契約からあらためて、「5年間」のカウントを始めることとなる。
連続性を断つという点で、非常に効力が強い(いわば「時効中断」)。
2017年12月27日 厚労省調査
厚生労働省は、「無期転換ルール」について、大手自動車メーカー10社を対象に制度の運用状況を調査した結果を公表した。

・厚労省:「今回の調査は、無期転換ルールに関する企業の対応について外形的に把握したものであり、その限りでは、現時点で直ちに法に照らして問題であると判断できる事例は確認されませんでしたが、雇止めや就業規則の変更の有効性については、最終的には司法において判断されます。 なお、各企業等において、例えば、労働者を長期に雇用することを前提としているにもかかわらず、無期転換ルールの適用を意図的に避ける目的でクーリング期間の前に雇止めをしている場合などは、個々の事案によって雇止めの有効性等が最終的に司法において判断されることになります」

No4 特例活用

労働者の種類、雇用形態によっては、「無期転換ルール」を一律に適用することができないケースがあり、このような場合に備えて、法律は「無期転換ルールの特例」を定めた。
「無期転換ルールの特例」にあてはまる労働者は、その特例の内容ごとに、無期転換の申込みができなくなるなど、特別の取り扱いが定められている。
2013年 特別立法)研究開発力強化法改正(自民党政権時)
      大学・研究機関の教員・研究者等についての特例
2014年 特別立法)有期雇用特別措置法
      高度専門職・継続雇用高齢者
(1)高度専門職
年収要件(1075万円以上)、職務範囲(博士、各種士業、、、)上限10年
(2)高年齢者の特例
無期転換制度は定年後再雇用者にも適用される。
ただし、高年齢者の特別措置法に基づいて、5年を超える有期労働契約の締結も可能
<主な条件・手続き>
・無期転換申込権が発生しないことを書面で明示
・計画書提出(雇用管理措置の内容、高年法9条の措置。契約書のひな型、就業規則等の添付)
・労働局長の認定

Q すでに定年退職者を有期雇用しているが、特例の認定を受けた場合、その労働者も特例の対象者となるか?
・・・YES
Q 定年退職者以外の高年齢者は特例の対象者となるか?
・・・NO(特措法8条2項)
Q 計画の認定を受けた時点で(受ける前に)、無期転換権を行使していた場合は、特例の対象者となるか・・・No
無期転換権行使後は特例の効力が及ばない。

No5 無期続行

Q そもそも、5年経過後(転換権発生後)もそのまま有期契約労働者として雇うことは問題ないか?
労働契約法は有期契約から無期契約へ転換するか否かを「従業員の意思表示」を要件とし、労働者の意思に委ねている。通算期間5年を超えていても、そのまま期間雇用契約を更新することは可能。
ただし、条文上も、「無期転換権を喪失しない限り、無期転換権を従業員が有すること」には変わりはなく、不安定な状況が続くことになる。
Q 無期転換権行使についての通知義務はあるか?
現行法では、使用者が該当従業員に対し無期転換権が発生したことを告知する義務は明記されていない。

Ⅳ 具体的な対応策2(転換方向) ~同一労働同一賃金~

労働契約法18条1項 ・・・無期転換権行使「・・・この場合において、当該申込みに係る期間の定めのない労働契約の内容である労働条件は、現に締結している有期労働契約の内容である労働条件(契約期間を除く。)と同一の労働条件(当該労働条件(契約期間を除く。)について別段の定めがある部分を除く。)とする。
無期転換ルールは、有期労働契約を無期労働契約にするというルールであって、正社員にしなければならない制度ではない。
そして、契約期間以外の労働条件は、別段の定めを設けないかぎり、有期雇用契約と同じ内容になるのが原則。

想定されるトラブル~雇止めに対抗した無期転換権行使

Q 仮に、雇止めが無効であったとした場合の労働条件は?(適用される就業規則は?)
バッド事例1
就業規則の社員の定義として、「正社員=期間の定めのない者」とした場合、無期転換労働者も「正社員」就業規則が適用されてしまう。
規定文言等によっては、退職金や各種手当の受給主張の可能性も出てくる。
バッド事例2
Q17 就業規則がない場合や無期転換就業規則(条項)がない場合の定年は

定年規定がない以上、「定年なき無期労働契約」と判断される可能性も。
逆に「正社員就業規則適用」と主張した場合、退職金や各種手当の受給主張の可能性も出てくる
ポイント1 適用される就業規則を事前に明確にしておく
無期転換を申し込んだ社員が無期転換してしまうと、その後に「別段の定め」を定めて労働条件を変更しようとしても、「不利益変更」であり、個別の同意があるか、合理的な就業規則の変更によるのでなければ不可能となってしまう。
できる限り、無期転換権が行使される前に、就業規則の整備をしておく
そのうえで、適用される内容、条件を通知しておくことも有用。
Cf 受領通知書例
制度設計上の留意点
(1)賃金
(2)賞与・退職金
退職金制度上の「勤続年数」 有期期間分を合算or転換後からカウント・・・どちらもありうるが、明示することで転換後からカウントとすることも可能
(3)勤務地・職種等
(4)正社員との労働条件の差異(cf同一労働同一賃金。特にパートタイマーの場合)
B 正社員、限定社員その他
無期転換権取得等を契機に、正社員や限定正社員その他に登用する対応も。
「限定正社員」とは…勤務地・職務・勤務時間が通常の正社員に比べ限定された無期契約の労働者
平成26年7月、厚生労働省の有識者懇談会がまとめた報告書において、「多様な正社員」)
→ 労働者にとっては勤務地等が限定されている。個々人の事情に応じて各限定を受けながら無期雇用で社会において能力が発揮でき、ワークライフバランスを実践できるため、多様な働き方が可能になる。
→人事権行使が限定されている。限られた労働力人口の中から、優秀な人材を定着させることができる。
例:飲食(例:スターバックス)、小売り(例:ユニクロ)等
<本音>それなりの人材をそれなりのコストで使うことができるメリット有
*議論の発端は「有期の無期化」の議論
→ 限定正社員の供給源の多くは無期転換社員(労契法18条)になると予想される
今回のテーマとの関係では、無期転換した後の無期契約社員の受け皿と期待されている。
二極化から多様化へ

ちなみに、Q  限定正社員は解雇されやすいのか(しやすいのか)?
NO 「限定正社員」であっても、解雇をするときには「解雇権濫用法理」が適用され、合理的な理由がなく、社会的にも不相当な解雇は、「不当解雇」として違法、無効となる。
ただし、限定正社員の、限定された労働条件の種類によって、解雇が有効か無効かを判断するにあたって、次のような点が異なる可能性がある。
●「勤務地」を限定された限定正社員の解雇のケース
:整理解雇など、事業所や部署が廃止されることによって整理解雇される場合に、他の勤務地で働かせることを検討すべき必要性は、通常の正社員よりも低いものと判断される可能性が高い。
●「労働時間」を限定された限定正社員の解雇のケース
:懲戒解雇など、労働者の問題行為を理由とする解雇をする場合に、残業をしていないことは、解雇の合理的な理由とはならない。
●「職種」を限定された限定正社員の解雇のケース
:普通解雇など、労働者の能力、適性を理由とする解雇をする場合に、その適正を判断するにあたっては、総合職正社員に比べて、その限定された「職種」への適正のみが判断対象となりやすい。

Q 限定正社員と(無限定)正社員の待遇差
労契法20条、パート法8条9条 → 待遇差を設けてもいいことが前提となっている。
有識者懇談会報告書(H26.7)における待遇差の数字(8~9割)
→ 当該企業における、限定による労使のメリット・デメリットの内容次第。
(ex.転勤がないことは当該企業の労使にとってどのような意味があるか)
無期転換権取得等を契機に、正社員や限定正社員その他に登用の場合
→無期転換後の働き方の変更の是非について、労働者の「自由意思」とすることは混乱を招くことなり、「方向性」をもった制度設計を行うことが重要。会社が主体
∟ex無期転換or限定正社員or正社員登用試験or有期続行

無期転換方向

ポイント:無期転換した社員の活用イメージを考える
●正社員:優秀な労働力を確保しやすくするためには、正社員登用を検討。この場合、有期契約期間の早い段階から、登用をすることも可能。
●限定正社員(勤務地限定など):短時間勤務、地域を限定した勤務を希望する有期契約社員が、長期間会社で働き続けられるよう、一定の限定をつけて配慮をすることも可能。
●雇用期間のみ無期の社員:正社員との間で技術的な格差が非常に大きい場合や、無期転換する社員が少数にとどまるような場合には、雇用期間のみ無期とし、その他の労働条件を変更しない方法も考えられる。
→選抜試験・制度やルールの整備
*適用される就業規則、条項が変わる場合に不利益変更に該当か?
通達第5 4(2)カ:別段の定めをする場合においては、法第7条から第10条までに定められている就業規則法理を変更することになるものではない」・・・適用を受ける就業規則が変わるだけで、不利益変更の問題は生じない。 

Ⅴ まとめ

まとめ:対応区分

無期転換の対応状況

●平成29年5月23日公表
郵送調査票:有効回収数9639件(32%)
●1 認知度
改正内容まで知っている49%、知っているが内容はわからない36%

●2 雇止め・無期転換
・5年を超えないように運用:8%
・申し込みがなされた時から順次無期へ:35%
・5年前に無期へ25%
・未定:26%


●3 無期転換の形態
・条件そのままに契約だけ無期:37%(フルタイム)
・正社員区分に:30%(同上)
・正社員以外の既存・新設区分:12%(同上)

まとめ

★非転換方向(雇止方向)
ポイント 実態を無期と区別し、期待も生じさせない(名実ともに)
1 有期雇用の理由をはっきりする
2 無期雇用と明確に区別すること
3 規則を整備すること
4 契約更新手続きを厳格に行うこと。
∟非転換は容易ではなく、慎重な制度設計・対応が必要。
  雇止め、不更新合意・上限規定、クーリング期間、特例活用…
★転換方向
ポイント1 従業員の活用をイメージし、類型ごとに整理し、就業規則上も明確にする(適用対象を今まで以上に明確に。不利益変更にも注意)。
ポイント2 同一同労同一賃金の観点にも配慮して労働条件を設定する。
∟非転換方向・転換方向にかかわらず、「無期転換」にとらわれすぎず、雇用制度の全面的見直し・再定義の機会(好機)と考えてもらう。