企業が知っておくべき長時間労働対策
3.長時間労働対策
以下に区分される
①紛争解決(火消)
②紛争予防(火災予防)
①個別紛争解決の手順(概略)
「ステージ」が上がると解決コスト(キャッシュ・時間)が上がる
まず(A)社内での解決を図る
- 代理人が就かない状況での解決がベスト(解決水準等)
- 根も葉もないような場合を除き、「代理人」を強調する必要はない(「こちらも代理人(もしくは労基)」となる可能性が高くなる。
- 各論点の強弱を分析(「見立て」)する。紛争の本質は「適切な」コミュニケーション不足(≒パワハラ)。適切なコミュニケーションをとって、無血(キャッシュアウトなし)で解決のことも少なくない。
(B)代理人が就いた場合でも、「見立て」に基づき早期合意解決が基本(守秘義務条項付) 完勝にこだわるとリスク増
(C)労働審判や(D)訴訟まで発展した場合でも、和解解決が基本
*合意解決時
解決名目:「解決金」
周囲への説明:「弁護士費用」 (相手方?、会社側?)
なるべく細かい金額としない(計算式を探ってもらう必要はない)
*課税上の扱いは留意
- 方針のポイント(まとめ)
「諸ファクター」の入念な検討
1 勝訴見込(論点ごとの強弱分析)
2 ステージごとのコスト分析
解決コスト+手続コスト+所要時間・ストレス(生産性の低下)
3 その他リスクの考慮
- 敗訴リスク(元本、損害金、+付加金リスク)
- 風評リスク(判決公表。労働事件名≒会社名)
- 他の従業員・退職者へも拡散(訴訟の併発、離職増)
- ネット上にも拡散→採用難・労基目線
「早いステージ」の「合意解決」に勝るものはない
②予防・改善の手順
- 長時間労働対策にあたっての企業としての正当なアプローチ
≠残業代の踏み倒しではない
残業代=基礎単価(時給)×時間外労働時間数-既払い残業代
- 労働時間数の「みなし系制度」は裁判例上限界あり。
- 法改正の傾向も、厳しい適用条件が付されると思われる。
- 残業代の減少という点のみからすれば、「掛け算の単価」・「数量」を削るほかない。
- 具体的には、固定残業代制度の導入や歩合制の導入など。
- あわせて「労働時間の把握(労働時間、在社時間の削減・検証)」も必須
*適正把握ガイドライン
ルール整備
- まずは労働時間の把握(把握しなければ管理も対処もできない)
- その上でポリシー策定 「残業は生産性を高める?」 ×
- その上で制度設計(就業規則、個別契約書、各種規程、周知文書、マニュアル等)
就業規則についての裁判所の見方
・ 規則の文言も重要だが、実際に見ているのは会社の姿勢や全社的な運用
(有名無実か。手当や定額残業代などはその傾向が顕著)
- 例 「終業時間後の残業はない」
裁判官の質問)
「周りの従業員(特に職位が同じ従業員)も皆、定時で帰宅しているの?」
(→他の社員のタイムカードの提出指示)」
「陳述書を提出した同僚も「残業していない」と言ってくれるの?」
4.まとめ
ちなみに
- なぜ8時間?
1886年 アメリカ労働総同盟ストライキ「8時間労働、8時間睡眠、8時間自由時間」
- 労働時間が8時間を超過すれば、何かを圧迫する
- 睡眠によって人は回復する。2日間は持っても3日連続はきつい。
cf 水曜ノー残業デー 2日間の疲労蓄積の開放
- 仕事と労働の区別
新入社員に「仕事」を求めてはいけない(できなくてもいったん区切る)
成果が出ようが出まいが、「一線を越えた長時間労働」は健康を害する
立教大砂川教授 「早く帰っていいんだという職場風土、変だなと感じたとき異議申し立てができることが重要」
1 残業代紛争の発生時 :早いステージでの早期解決に勝るものはない
2 予防 労働時間を把握し、方針を策定した上で、適切な制度設計
① トップメッセージ
② ルール整備
③ 周知・研修
④ モニタリング
これらをPDCAで回す
制度と運用は車の両輪
→内部からの浄化は容易でない
→外部知見の積極的活用