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弁護士がハマキョウレックス・長澤運輸事件最高裁判決を解説

~H30.6.1ハマキョウレックス・長澤運輸事件最高裁判決をふまえた実務対応~

 

2018.06.01 ハマキョウレックス、長澤運輸

   同一労働同一賃金に関係する最高裁判断(有期・高齢者)/

 

1 労契法第20条

 

・(期間の定めがあることによる不合理な労働条件の禁止)

有期労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件が、期間の定めがあることにより同一の使用者と期間の定めのない労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件と相違する場合においては、当該労働条件の相違は、労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下この条において「職務の内容」という。)、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して、不合理と認められるものであってはならない。

 

Q「職務の内容、職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情」とは?

Q「不合理と認められるもの」とは?

<cf別紙平成24年8月10日基発第0810第2号>法第20条により不合理とされた労働条件の定めは無効となり、故意・過失による権利侵害、すなわち不法行為として損害賠償が認められ得ると解されるものであること。また、法第20条により、無効とされた労働条件については、基本的には、無期契約労働者と同じ労働条件が認められると解されるものであること。

Q「不合理と認められ」た場合は正社員の就業規則が適用されるのか?

立法経過

  • 2007年 労契法3条2項(労働契約の原則) 「労働契約は、労働者及び使用者が、就業の実態に応じて、均衡を考慮しつつ締結し、又は変更すべきものとする。」
  • 2007年 パートタイム労働法 「通常の労働者と同視すべき短時間労働者に対する差別的取扱いの禁止(8条)、賃金、教育訓練、福利厚生施設についての均衡処遇の努力義務、配慮義務(9〜11条)
  • 問題点:理念規定、努力義務、配慮義務。

       パートタイム労働法8条も適用範囲限定。

  • cf 労基法上は「国籍、信条又は社会的身分」(3条)、性別(4条)の差別的取り扱いは禁止

    ↓

  • 2012年:労契法改正で20条規定 

  立法趣旨は、有期労働者と無期労働者の格差是正。

 

2 労契法20条をめぐる従前裁判例

(1)労契法20条制定前

 

イ 日本郵便逓送事件(大阪地裁平成14.5.22)

→ 労働条件の格差は基本的に違法の問題を生じない

 

ウ 京都市女性協会事件(第一審・控訴審)

(控訴審)→ ①有期社員の労働が正社員と比較して同一(価値)労働と認められ、かつ、② 会社の慣行や就業の実態を考慮しても許容できないほど著しい賃金格差が生じていることが認められる場合には均衡の理念に基づく公序違反として不法行為が成立する余地があるものの、原告と比較対象の正社員との労働は同一(価値)とはいえない。

(2) 2012年労契法20条制定後

  • 2015年にはパート法8条が新設された。
  • 特にここ1、2年で労契法20条をめぐる紛争が増加した。
  • 雇止め無効とともに主張されるケースが多い
  • 業種としては運輸業が多い(ドライバー職は「同一労働」が主張されやすい)

ア ハマキョウレックス事件

  (大津地裁彦根支部平27.9.16・控訴審大阪高裁平28.7.26) → 最高裁)

  労契法20条違反について初めて判断した判決

イ 長澤運輸事件(東京地裁平28.5.13、控訴審東京高裁平28.11.2→最高裁)

  定年後再雇用による嘱託社員が対象

ウ L 社事件(東京地裁平成28.8.25):定年後再雇用(但し労契法20条主張なし)

エ メトロコマース事件(東京地裁平成29.3.23→控訴審継続中):非運送業対象

オ ヤマト運輸事件(仙台地裁平29.3.30):賞与のみ不合理性を主張

カ 日本郵政事件(佐賀)(第一審・控訴審)

キ 日本郵政事件(休職) :休職付与のみが対象

ク 日本郵政事件(東京)(東京地裁平29.9.14):割合的認定

ケ 日本郵政事件(大阪)(大阪地裁平30.2.21)

コ 九水運輸商事事件(福岡地裁小倉支部平30.2.1):通勤手当のみが対象

サ 井関農機ほか事件(松山地裁平30.4.24):賞与、物価手当のみが対象

 

3 労働契約法20条の解釈上の争点の整理

労契法20条が争点となった事件(長澤事件、ハマキョウレックス事件、日本郵政事件、メトロコマース事件等)において、具体的に争われたのは、概ね以下の各争点(ア~コ)。

<労契法20条の文言解釈>

ア 制度趣旨(均等待遇か均衡待遇か)

イ  「期間の定めがあることにより」の意義

 長澤運輸事件被告会社:定年後再雇用であることを理由に労働条件の相違を設けているのであって、期間の定めがあることを理由として労働条件の相違を設けているわけではないから、同条は適用されないと主張

ウ 「不合理と認められるもの」の解釈(立証責任論含む)

合理的である必要があるかどうか(合理的か不合理か不明の場合の判断)

エ 「労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度」の意義

オ 「当該業務の内容及び配置の変更の範囲」の意義

カ 「その他の事情」の意義

  「その他」は並列的なものか、①(職務内容)及び②(変更の範囲)の重みが大きいか

  長澤運輸事件第1審では、「、、、有期契約労働者の職務の内容(上記①)並びに当該職務の内容及び配置の変更の範囲(上記②)が無期契約労働者と同一であるにもかかわらず,労働者にとって重要な労働条件である賃金の額について,有期契約労働者と無期契約労働者との間に相違を設けることは,その相違の程度にかかわらず,これを正当と解すべき特段の事情がない限り,不合理であるとの評価を免れない」とした

キ 比較対照論

  有期雇用労働者と比較すべき「正社員」とはどのような者か

  →日本郵政事件(東京、大阪)では具体的な争点とした上で、新人事制度における「新一般職」を比較対象とし、メトロコマース事件では正社員全般としている。

ク 個別考察(手当毎)か総合考察(処遇全般)か

  →長澤運輸事件高裁判決では、原告側が個々の労働条件(賃金構成の各項目)についての相違の不合理性を判断すべきと主張したことに対して、同判決は再雇用者の賃金水準全体について考察した上で、不合理であるとは認められないとしている。

 

4-1 ハマキョウレックス事件最高裁の要点

1 ハマキョウレックス事件の概要

 貨物自動車運送業等を目的とする会社と有期労働契約を締結するトラック運転手である原告(契約社員)が、正社員(無期契約労働者)との労働条件の相違が不合理であり、労働契約法20条違反であると主張して争った事案

2 訴訟物(請求の趣旨)

ア 地位確認(正社員と同一の権利を有する地位にあることの確認)

イ 賃金請求(主位的に正社員への各手当の支給と原告に支給された手

  当との差額支払)

ウ 損害賠償(予備的に当該差額に相当する金額の損害賠償)

3 争点

 原告が不合理な相違であると主張して争った労働条件の相違は、以下のとおり。*赤文字部分は、最高裁が「不合理」とした部分

4 結論

  • <原判決>

①無事故手当、②作業手当、③給食手当、⑦通勤手当についての不合理性を認め、不法行為の成立を認めた上で、合計77万円の支払を命じた。

  • <本判決>

主文として、⑤皆勤手当に係る損害賠償請求に関する部分を破棄し、その部分につき大阪高裁に差し戻し、その余(①、②、③、⑦)の上告及び附帯上告は棄却(原審認容)。

→ ①無事故手当、②作業手当、③給食手当、⑤皆勤手当、⑦通勤手当について不合理と判断(皆勤手当は差し戻し)

ハマキョウレックス事件最高裁の要点

4-2 長澤運輸事件最高裁の要点

1 事案

 被告はセメント、液化ガス、食品等の輸送事業を営む株式会社であり、原告は被告を定年退職後、定年後再雇用されたバラ車(バラスメントタンク車)の嘱託乗務員である。

被告の正社員の就業規則では、基本給は在籍給と年齢給で構成され、乗務するバラ車の種類に応じた能率給、職務給が支給され、その他精勤手当、無事故手当、住宅手当、家族手当、時間外の超勤手当、通勤手当が支給され、賞与、退職金は別途規定される制度により支給される。

これに対して、定年後再雇用された場合には有期雇用労働者となり、嘱託社員就業規則が適用され、基本賃金、バラ車の種類に応じた歩合給、無事故手当(正社員と同額)、調整給(老齢厚生年金の報酬比例部分の支給が開始されるまでの間において月額2万円)、通勤手当(正社員と同)、時間外手当が支給され、賞与、退職金は支給されないこととなっている。

2 訴訟物(請求の趣旨)

ア 地位確認(正社員と同一の権利を有する地位にあることの確認)

イ 賃金請求(主位的に正社員への各手当の支給と原告に支給された手当との差額支払)

ウ 損害賠償(予備的に当該差額に相当する金額の損害賠償)

3 争点

 定年後再雇用により嘱託社員となった原告が、再雇用後の労働条件と定年前の労働条件との差異が不合理であると争われた。

 原告が不合理な相違であると主張して争った労働条件の相違は、以下のとおり。

4 判断

  • <原判決>

「定年退職後、引き続いて雇用されるに当たり、賃金が引き下げられるのが通例であることは、公知の事実である」とし、処遇全体を考察した上で、不合理ではないとした。

  • <本判決>

 主文として、③精勤手当に係る損害賠償請求に関する部分を破棄自判、(精勤手当の不支給故、超勤手当の基礎金額が異なるとして)⑧超勤手当の損害の計算につき高裁に差し戻し、その余の上告及び附帯上告は棄却。

→ 精勤手当、超勤手当の差異について不合理と判断

<定年後再雇用制度の特殊性について>

  • 「嘱託乗務員及び正社員は、その業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度に違いはなく、業務の都合により配置転換等を命じられることがある点でも違いはないから、両者は、①職務の内容並びに②当該職務の内容及び配置の変更の範囲(以下、併せて「職務内容及び変更範囲」という。)において相違はない」
  • 「しかしながら、・・・労契法20条は、・・・③『その他の事情』を挙げているところ、その内容を職務内容及び変更範囲に関連する事情に限定すべき理由は見当たらない」
  • 「定年制は、使用者が、その雇用する労働者の長期雇用や年功的処遇を前提としながら、人事の刷新等により組織運営の適正化を図るとともに、賃金コストを一定限度に抑制するための制度ということができるところ、定年制の下における無期契約労働者の賃金体系は、当該労働者を定年退職するまで長期間雇用することを前提に定められたものであることが少なくないと解される。これに対し、使用者が定年退職者を有期労働契約により再雇用する場合、当該者を長期間雇用することは通常予定されていない。また、定年退職後に再雇用される有期契約労働者は、定年退職するまでの間、無期契約労働者として賃金の支給を受けてきた者であり、一定の要件を満たせば老齢厚生年金の支給を受けることも予定されている」
  • 「・・・そうすると、有期契約労働者が定年退職後に再雇用された者であることは、・・・労働契約法20条にいう『その他の事情』として考慮されることとなる事情に当たると解するのが相当である」